CHAPTER 01
等加速度運動とグラフ
共通テストは「式を立てて解く」より先にグラフを読ませる。
v-tグラフの傾き=加速度、面積=変位。この2つが即答できるかどうかで、序盤の失点が決まる。
記号の約束
v速度 [m/s]v₀はじめの速度(初速度)a加速度 [m/s²]t時間 [s]x変位(はじめの位置からのずれ)[m]y高さ [m]g重力加速度 9.8 m/s²
1-1 3つの公式は「消したい文字」で選ぶ
等加速度運動の公式は3本あるが、覚えるのはどの文字が入っていないかだ。
問題文に出てこない量が消えている式を選べば、それが一発で答えになる。
① x が入っていない
v = v0 + at
時間 t と速度をつなぐ。「何秒後の速さ」型。
② v が入っていない
x = v0t + 12at2
時間 t と位置をつなぐ。「何秒後にどこ」型。
③ t が入っていない
v2 − v02 = 2ax
時間を聞かれていないときは必ずこれ。制動距離・最高点。
ANIMv-tグラフの面積が、そのまま物体の変位になる
t0.0 s
v0 m/s
x0 m
a0 m/s²
a を負にすると v-tの線が下がり、v が0を切ったところで物体は引き返す。
このとき面積は上側(正)と下側(負)で打ち消し合う ── これが「移動距離と変位は違う」の正体。
1-2 グラフ問題で聞かれることは3つしかない
| 聞かれ方 | v-tグラフで見るもの | ひとこと |
| 加速度はいくらか/どこで最大か | 傾き | 折れ線なら区間ごとに一定。曲線なら接線 |
| 何m進んだか/どこにいるか | 面積 | 台形・三角形に切る。軸より下は負 |
| いつ引き返すか/最高点はいつか | v = 0 の点 | 「最高点」=速度0であって加速度0ではない |
落とし穴
- x-tグラフとv-tグラフの取り違え。x-tの傾きは速度、v-tの傾きは加速度。問題の縦軸ラベルを必ず声に出す。
- 投げ上げの最高点で「加速度も0」としてしまう。空中にいる間 a = −g はずっと変わらない。
- 符号。上向き正と決めたら、下向きの量にはすべて負をつける。途中で正の向きを変えない。
- 移動距離 ≠ 変位。引き返す運動で「進んだ道のり」を聞かれたら、折り返し前後で分けて足す。
1-3 鉛直投げ上げは、a = −g の等加速度運動でしかない
上向きを正、g = 9.8 m/s²(共通テストでは 9.8 が基本。問題文が 10 と与えたらそれに従う)とすると:
投げ上げ・自由落下
v = v0 − gt / y = v0t − 12gt2 / v2 − v02 = −2gy
最高点:v = 0 より t = v0/g、高さ y = v02/(2g)。
元の高さに戻るとき:y = 0 より t = 2v0/g(上りと下りが対称)、速さは v0 のまま。
水平投射・斜方投射は、水平方向=等速、鉛直方向=等加速度に分解するだけ。時間 t が2方向をつなぐ唯一の共通量になる。
CHAPTER 02
運動方程式と摩擦
力学の問題は、結局「力を全部描く → 方向を1本決める → ma = F を書く」の3手で終わる。
差がつくのは計算ではなく、力の描き漏らしと正の向きの取り直し。
記号の約束
m質量 [kg]F力 [N]a加速度 [m/s²]N垂直抗力 [N]f摩擦力 [N]μ静止摩擦係数μ′動摩擦係数T糸の張力 [N]θ斜面の傾角g重力加速度
2-1 力の描き方は順番が決まっている
- 重力 mg(必ずある。重心から下向き)
- 接触している面から:垂直抗力 N(面に垂直)+摩擦力 f(面に平行)
- つながっているものから:糸の張力 T(糸に沿って引く向き)、ばねの弾性力 kx
- これ以外は描かない。「進む力」「勢い」は存在しない
描いたあとに必ずやること
正の向きを1本決めて、図に矢印で書き込む。斜面なら「斜面に沿って下向きを正」。
これを紙に書かずに頭の中でやると、符号ミスがそのまま失点になる。
ANIM斜面:静止摩擦は「必要なだけ」出て、μN で頭打ちになる
mg sinθ—
μN(上限)—
加速度 a—
m = 1.0 kg, g = 9.8
θ を上げていくと mg sinθ が伸び、上限 μN を超えた瞬間に滑り出す。
滑り出す角度は tanθ = μ ── 質量に依存しないのがポイント。
静止しているとき
f = mg sinθ
静止摩擦力は「つり合うのに必要な値」を取る。μN ではない。μN はあくまで上限。
滑り出す条件
tanθ = μ
mg sinθ > μmg cosθ を整理しただけ。m と g が消える。
滑っているとき
a = g(sinθ − μ′cosθ)
動摩擦力は f′ = μ′N で速さによらず一定。
2-2 連結体と滑車は「物体ごとに1本ずつ」
2物体が糸でつながっているとき、まとめて1つの物体として見る式と1つずつ書いて連立する式の2通りがある。
加速度だけ聞かれたら前者、張力を聞かれたら後者。
FIG定滑車(アトウッドの装置):向きの取り方
同じ糸なら張力はどこでも同じ大きさ(軽い糸・なめらかな滑車のとき)。
T は m₁g と m₂g の間の値になる ── 検算に使える。
落とし穴
- 垂直抗力を N = mg と決めつける。斜面なら mg cosθ、
加速するエレベーター内なら m(g ± a)、上から押されていれば mg + F。毎回つり合いから出す。
- 静止摩擦力に μN を代入してしまう。動き出す直前だけが μN。
- 作用・反作用とつり合いの混同。つり合いは同じ1つの物体にはたらく2力、作用反作用は別々の2物体にはたらく2力。
- 糸が「たるむ」場合。張力は引く向きにしか出ない。T < 0 になったら状況設定が違う。
CHAPTER 03
剛体のつり合い
物理基礎では「大きさのない点」だったものが、ここで大きさのある棒や板になる。
増える条件はたった1つ、回転しないこと=モーメントの和がゼロ。
記号の約束
M力のモーメント [N·m]F力 [N]ℓうでの長さ [m]L棒の長さ [m]m質量 [kg]x_G重心の位置 [m]N垂直抗力 [N]f摩擦力 [N]θ棒と床のなす角
この章では モーメント=M、質量=m と書き分ける。問題によっては質量に M を使うものもあるので、問題文でどちらを指しているか毎回確認すること。
3-1 モーメントは「力 × うでの長さ」だが、うでの取り方が命
力のモーメント
M = F ℓ
ℓ は回転軸から力の作用線におろした垂線の長さ。
力が斜めなら、①力を分解するか②うでを垂線で取るかのどちらか。両方やると2回割ることになる。
剛体のつり合い(2条件)
① 力の和 = 0(x 方向・y 方向それぞれ) ② 任意の点まわりのモーメントの和 = 0
②の「任意の点」は自分で選べる。未知の力が一番多く集まる点を軸にすると、その力が式から消える ── これが最大の武器。
ANIM天秤:モーメントの差だけが、回転を決める
左 m₁g d₁—
右 m₂g d₂—
差—
重い方が勝つのではなく、m×d が大きい方が勝つ。
軽いおもりでも、遠くに置けば重いおもりを持ち上げられる。m1d1 = m2d2 でつり合い。
3-2 重心は「質量で重みをつけた平均の位置」
重心
xG = m1x1 + m2x2 + …m1 + m2 + …
一様な棒・板の重心は幾何学的な中心。くり抜き問題は「くり抜いた部分を負の質量として足す」と一発で出る。
FIGはしご問題:軸を「床との接点」に取ると、未知数が2つ消える
軸の選び方で計算量が3倍変わる。未知の力が集まっている点を軸にすると覚えておけばよい。
落とし穴
- 斜めの力でうでを取り違える。うでは「軸から作用線への垂線」。棒に沿った距離をそのまま掛けない。
- 重力を端に描く。一様な棒の重力は重心(中点)にはたらく。
- 力のつり合いだけで満足する。剛体では力の和が0でも回り出すことがある(偶力)。必ずモーメントも書く。
- 回転の向きの符号。反時計回りを正と決めたら最後まで通す。
CHAPTER 05
運動量と力積
衝突の問題でエネルギー保存を使ってはいけない ── 熱や音になって減るから。
衝突で必ず成り立つのは運動量保存だけ。エネルギーの減り方を指定するのが反発係数 e。
記号の約束
p運動量 [kg·m/s]F力 [N]t力がはたらいた時間 [s]m質量 [kg]v衝突前の速度 [m/s]v′衝突後の速度 [m/s]e反発係数h高さ [m]V合体後の速さ [m/s]
速度は向きを持つ量。右向きを正と決めたら、左向きの速度には必ず負号をつける。
5-1 力積は「運動量の変化」そのもの
力積と運動量
Ft = mv′ − mv
運動方程式 ma = F の両辺に t を掛けただけ。
力が変化するときは、F-tグラフの面積が力積になる(=平均の力 × 時間)。向きを持つ量なので、符号を必ず決める。
運動量保存
m1v1 + m2v2 = m1v1′ + m2v2′
外力がない(or 無視できる一瞬)なら必ず成立。衝突・分裂・打ち上げ。
反発係数
e = −v1′ − v2′v1 − v2
「近づく速さに対する遠ざかる速さの比」。0 ≦ e ≦ 1。
床との跳ね返り
h′ = e2h
速さが e 倍 → 高さは e² 倍。n回では e2nh。
ANIM衝突:運動量は必ず保たれ、運動エネルギーは e が1でないと減る
衝突後 v₁′—
衝突後 v₂′—
失った K—
e = 1(弾性衝突)だけが運動エネルギーも保たれる。e = 0 なら合体して一緒に進む。
どんな e でも、黒い運動量バーの長さは衝突の前後で変わらない。
5-2 エネルギーと運動量、どちらを使うか
| 問題文にあるもの | 使う道具 | 典型 |
| 時間(0.1秒間、接触時間、平均の力) | 力積 Ft = Δ(mv) | バットとボール、壁との衝突 |
| 衝突・合体・分裂 | 運動量保存(+e) | 台車の衝突、ロケット、爆発 |
| 距離・高さ・ばねの縮み | エネルギー | 斜面、振り子、ばね |
| 衝突したあと、どこまで上がるか | 両方(衝突=運動量、その後=エネルギー) | 弾丸が木片に刺さって振れ上がる |
頻出:弾丸が木片に刺さる型
①刺さる瞬間は一瞬なので運動量保存 → 一体となった速さ V = mv/(M+m)。
②刺さったあとはゆっくり振れ上がるのでエネルギー保存 → ½(M+m)V² = (M+m)gh。
この2段を1本の式でやろうとすると必ず間違う。区切りは「一瞬か、そうでないか」。
落とし穴
- 衝突で力学的エネルギー保存を使う。e = 1 と明記されていない限り使えない。
- 速度の符号。運動量はベクトル。左向きに動いているなら v は負。
- 反発係数の分母・分子の取り違え。分母が衝突前の相対速度。マイナス符号を忘れない。
- 床との衝突で運動量保存を使う。床(地球)を含めないと保存しない。床の問題は e の式だけ使う。
CHAPTER 06
円運動
「向心力という新しい力がある」と思った瞬間に沈む。
向心力とは張力や垂直抗力や重力が、たまたま中心を向いている合力のこと。新しい力は1つも増えない。
記号の約束
r円の半径 [m]ω角速度 [rad/s]v速さ [m/s]a向心加速度 [m/s²]T周期 [s]n1秒あたりの回転数 [1/s]F向心力 [N]m質量 [kg]
張力も T と書く習慣があるため、張力と周期が同じ問題に出るときは「張力 T・周期 T周期」のように書き分ける(この本ではそうしている)。
6-1 等速円運動の量は、すべて ω でつながる
速さ
v = rω
向きは常に接線方向。速さは一定でも速度は変化している。
向心加速度
a = v2r = rω2
向きは常に中心向き。速度が変わる=加速度がある。
周期・回転数
T = 2πω n = 1/T
1周にかかる時間。ω = 2πn。
運動方程式(向心方向)
mv2r = F
右辺には実在する力の中心向き成分の和を書く。
ANIM見る人によって、描く力の図が変わる
v = rω—
a = rω²—
F = mrω²—
T = 2π/ω—
m = 0.5 kg
地面から見れば「張力だけがあり、それが加速度をつくる」。
一緒に回る人から見れば「張力と遠心力がつり合って静止している」。
どちらか一方に決めて、混ぜないこと。遠心力を描いたうえで「向心力=mv²/r」と書くのが最悪のパターン。
FIG鉛直面内の円運動:最高点で糸がたるまない条件
「向心方向の運動方程式」と「エネルギー保存」の2本立てが鉛直円運動の型。
位置によって力の向きの関係が変わるので、必ずその点で図を描き直す。
落とし穴
- 向心力を「新たに描き足す」。向心力は結果であって原因ではない。描くのは張力・重力・垂直抗力だけ。
- 遠心力と向心力を同じ図に書く。地面から見るか、回転系で見るか、どちらか一方。
- 等速円運動なら加速度0と思う。速さは一定でも向きが変わるから加速度はある。
- 鉛直円運動で最高点の条件を v = 0 とする。糸なら v² ≧ gr、棒(レール)なら v ≧ 0 でよい ── ここは区別される。
CHAPTER 07
単振動
単振動とは「ばねの運動」のことではない。加速度が変位に比例して、逆向きの運動すべてが単振動だ。
a = −ω²x の形を見つけた瞬間に、周期の公式が全部使える。
記号の約束
x振動の中心からの変位 [m]A振幅 [m]ω角振動数 [rad/s]T周期 [s]kばね定数 [N/m]K復元力の比例定数(F = −Kx の K)ℓ振り子の糸の長さ [m]m質量 [kg]g重力加速度
k と K は別物。ばねなら K = k だが、浮力や複数のばねが絡むと K は k と違う値になる。
7-1 定義は1本、あとは全部そこから出る
単振動の定義
a = −ω2x
力でいえば F = −mω²x = −Kx。
運動方程式を立てて、この形になったら単振動と判定し、ω = √(K/m)、T = 2π/ω = 2π√(m/K) と読む。
x は振動の中心からの変位であって、原点からの距離ではない。
変位・速度・加速度
x = A sin ωt
v = Aω cos ωt、a = −Aω² sin ωt。v は x より 1/4周期先、a は x と逆位相。
最大値
vmax = Aω amax = Aω2
v が最大なのは中心、a が最大なのは端。ここが逆になりやすい。
ばね振り子
T = 2π√(m/k)
振幅にも重力にも無関係。鉛直につるしても周期は同じ。
単振り子
T = 2π√(ℓ/g)
質量に無関係(振れが小さいとき)。糸の長さと g だけで決まる。
ANIM単振動は「等速円運動を真横から見た影」
周期 T—
ω—
vmax—
amax—
振幅 A を変えても周期は変わらない(グラフの山の高さだけが変わる)。
変わるのは m と k だけ ── これが T = 2π√(m/k) の意味。
赤い矢印(加速度)は常に中心を向き、端で最大・中心でゼロになる。
7-2 「振動の中心」はつり合いの位置
鉛直につるしたばね振り子では、自然長の位置ではなく 力がつり合う位置(自然長から mg/k 伸びた点)が振動の中心になる。
そこを原点に取り直せば、重力の項がきれいに消えて ma = −kx の形になる。だから周期は水平のときと同じ。
単振動の解き方(型)
① つり合いの位置を求める(そこが振動の中心)
② 中心から x だけずらして運動方程式を立てる
③ ma = −Kx の形にして K を読む → T = 2π√(m/K)
④ 速さが要るならエネルギー保存 ½mv² + ½Kx² = ½KA²
落とし穴
- x を「自然長からの伸び」にする。単振動の x はつり合い位置からのずれ。
- 周期が振幅で変わると思う。単振動では変わらない(等時性)。
- 端で加速度0、中心で加速度最大と逆に覚える。速度と加速度は入れ替わりの関係。
- 単振り子で質量が効くと思う。T = 2π√(ℓ/g) に m は出てこない。