← INDEX
物理/第1部 力学
共通テスト 2027PHYSICS 01

力学の全体像
と、手が動くまでの反復

力学は共通テスト物理の配点最大であり、電磁気・波動・熱・原子すべての土台になる。 この参考書は概念を図とアニメで一度つかむことに絞り、問題そのものは別冊の問題集(PDF)で反復する。 各講の最後にある反復ドリルは数値が毎回変わるので、手が勝手に動くまで回すこと。

この本の使い方

1 アニメを触って概念を体で入れる(1講あたり5分)。スライダーを動かしてどこが変わるかを見る。

2 公式カードを声に出して1回読む。暗記ではなくどの状況で使うかをセットで覚える。

3 反復ドリルを連続10問正解するまで回す。ここが計算体力。

4 別冊PDF『力学 問題集』の該当章を解く。3周ぶんのチェック欄がある。

CHAPTER 01

等加速度運動とグラフ

共通テストは「式を立てて解く」より先にグラフを読ませる。 v-tグラフの傾き=加速度、面積=変位。この2つが即答できるかどうかで、序盤の失点が決まる。

記号の約束
v速度 [m/s]v₀はじめの速度(初速度)a加速度 [m/s²]t時間 [s]x変位(はじめの位置からのずれ)[m]y高さ [m]g重力加速度 9.8 m/s²

1-1 3つの公式は「消したい文字」で選ぶ

等加速度運動の公式は3本あるが、覚えるのはどの文字が入っていないかだ。 問題文に出てこない量が消えている式を選べば、それが一発で答えになる。

① x が入っていない
v = v0 + at
時間 t と速度をつなぐ。「何秒後の速さ」型。
② v が入っていない
x = v0t + 12at2
時間 t と位置をつなぐ。「何秒後にどこ」型。
③ t が入っていない
v2 − v02 = 2ax
時間を聞かれていないときは必ずこれ。制動距離・最高点。
ANIMv-tグラフの面積が、そのまま物体の変位になる
出発点 実際の運動(1次元) v-tグラフ 傾き=加速度 a v [m/s] t [s] 面積=変位 x x-tグラフ 傾き=速度 v x [m] t [s]
t0.0 s v0 m/s x0 m a0 m/s²

a を負にすると v-tの線が下がり、v が0を切ったところで物体は引き返す。 このとき面積は上側(正)と下側(負)で打ち消し合う ── これが「移動距離と変位は違う」の正体。

1-2 グラフ問題で聞かれることは3つしかない

聞かれ方v-tグラフで見るものひとこと
加速度はいくらか/どこで最大か傾き折れ線なら区間ごとに一定。曲線なら接線
何m進んだか/どこにいるか面積台形・三角形に切る。軸より下は負
いつ引き返すか/最高点はいつかv = 0 の点「最高点」=速度0であって加速度0ではない
落とし穴

1-3 鉛直投げ上げは、a = −g の等加速度運動でしかない

上向きを正、g = 9.8 m/s²(共通テストでは 9.8 が基本。問題文が 10 と与えたらそれに従う)とすると:

投げ上げ・自由落下
v = v0 − gt / y = v0t − 12gt2 / v2 − v02 = −2gy
最高点:v = 0 より t = v0/g、高さ y = v02/(2g)。
元の高さに戻るとき:y = 0 より t = 2v0/g(上りと下りが対称)、速さは v0 のまま。

水平投射・斜方投射は、水平方向=等速、鉛直方向=等加速度に分解するだけ。時間 t が2方向をつなぐ唯一の共通量になる。

CHECK — 次に進む前に
CHAPTER 02

運動方程式と摩擦

力学の問題は、結局「力を全部描く → 方向を1本決める → ma = F を書く」の3手で終わる。 差がつくのは計算ではなく、力の描き漏らしと正の向きの取り直し。

記号の約束
m質量 [kg]F力 [N]a加速度 [m/s²]N垂直抗力 [N]f摩擦力 [N]μ静止摩擦係数μ′動摩擦係数T糸の張力 [N]θ斜面の傾角g重力加速度

2-1 力の描き方は順番が決まっている

  1. 重力 mg(必ずある。重心から下向き)
  2. 接触している面から:垂直抗力 N(面に垂直)+摩擦力 f(面に平行)
  3. つながっているものから:糸の張力 T(糸に沿って引く向き)、ばねの弾性力 kx
  4. これ以外は描かない。「進む力」「勢い」は存在しない
描いたあとに必ずやること

正の向きを1本決めて、図に矢印で書き込む。斜面なら「斜面に沿って下向きを正」。 これを紙に書かずに頭の中でやると、符号ミスがそのまま失点になる。

ANIM斜面:静止摩擦は「必要なだけ」出て、μN で頭打ちになる
θ 摩擦力の大きさ 上限 μN 斜面に沿う重力成分 mg sinθ —
mg sinθ— μN(上限)— 加速度 a— m = 1.0 kg, g = 9.8

θ を上げていくと mg sinθ が伸び、上限 μN を超えた瞬間に滑り出す。 滑り出す角度は tanθ = μ ── 質量に依存しないのがポイント。

静止しているとき
f = mg sinθ
静止摩擦力は「つり合うのに必要な値」を取る。μN ではない。μN はあくまで上限。
滑り出す条件
tanθ = μ
mg sinθ > μmg cosθ を整理しただけ。m と g が消える。
滑っているとき
a = g(sinθ − μ′cosθ)
動摩擦力は f′ = μ′N で速さによらず一定。

2-2 連結体と滑車は「物体ごとに1本ずつ」

2物体が糸でつながっているとき、まとめて1つの物体として見る式と1つずつ書いて連立する式の2通りがある。 加速度だけ聞かれたら前者、張力を聞かれたら後者。

FIG定滑車(アトウッドの装置):向きの取り方
m₁ m₂ T T m₁g m₂g m₁ > m₂ とすると、m₁ は下向きに、m₂ は上向きに動く。 そこで「m₁ は下向きを正」「m₂ は上向きを正」と 別々に 決めてよい(糸でつながる=加速度の大きさが同じ)。 m₁a = m₁g − T  m₂a = T − m₂g 辺々足すと T が消えて a = (m₁−m₂)g/(m₁+m₂) T = 2m₁m₂g/(m₁+m₂)

同じ糸なら張力はどこでも同じ大きさ(軽い糸・なめらかな滑車のとき)。 T は m₁g と m₂g の間の値になる ── 検算に使える。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 03

剛体のつり合い

物理基礎では「大きさのない点」だったものが、ここで大きさのある棒や板になる。 増える条件はたった1つ、回転しないこと=モーメントの和がゼロ。

記号の約束
M力のモーメント [N·m]F力 [N]ℓうでの長さ [m]L棒の長さ [m]m質量 [kg]x_G重心の位置 [m]N垂直抗力 [N]f摩擦力 [N]θ棒と床のなす角
この章では モーメント=M、質量=m と書き分ける。問題によっては質量に M を使うものもあるので、問題文でどちらを指しているか毎回確認すること。

3-1 モーメントは「力 × うでの長さ」だが、うでの取り方が命

力のモーメント
M = F ℓ
ℓ は回転軸から力の作用線におろした垂線の長さ。 力が斜めなら、①力を分解するか②うでを垂線で取るかのどちらか。両方やると2回割ることになる。
剛体のつり合い(2条件)
① 力の和 = 0(x 方向・y 方向それぞれ) ② 任意の点まわりのモーメントの和 = 0
②の「任意の点」は自分で選べる。未知の力が一番多く集まる点を軸にすると、その力が式から消える ── これが最大の武器。
ANIM天秤:モーメントの差だけが、回転を決める
支点 左まわり(反時計)のモーメント m₁g d₁ 右まわり(時計)のモーメント m₂g d₂ — ← 左が勝つ           右が勝つ →
左 m₁g d₁— 右 m₂g d₂— 差—

重い方が勝つのではなく、m×d が大きい方が勝つ。 軽いおもりでも、遠くに置けば重いおもりを持ち上げられる。m1d1 = m2d2 でつり合い。

3-2 重心は「質量で重みをつけた平均の位置」

重心
xG = m1x1 + m2x2 + …m1 + m2 + …
一様な棒・板の重心は幾何学的な中心。くり抜き問題は「くり抜いた部分を負の質量として足す」と一発で出る。
FIGはしご問題:軸を「床との接点」に取ると、未知数が2つ消える
重心(中点) Mg N(床) f(摩擦) N′(壁・なめらか) θ 床との接点まわりで立てる N と f は軸を通る → うでが0 → 消える N′·L sinθ = Mg·(L/2)cosθ → N′ = Mg/(2tanθ) 水平のつり合い f = N′、鉛直 N = Mg すべらない条件 f ≦ μN より tanθ ≧ 1/(2μ)

軸の選び方で計算量が3倍変わる。未知の力が集まっている点を軸にすると覚えておけばよい。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 04

仕事とエネルギー

「力学的エネルギー保存」を先に覚えると、摩擦が出てきた瞬間に手が止まる。 本体はエネルギー原理のほう ── 運動エネルギーの変化 = された仕事の総和。保存則はその特殊ケースにすぎない。

記号の約束
W仕事 [J]F力 [N]x移動距離 [m]θ力と移動方向のなす角K運動エネルギー [J]U位置エネルギー [J]h基準面からの高さ [m]kばね定数 [N/m]P仕事率 [W]dすべった道のり [m]

4-1 仕事の定義と、エネルギーの3種類

仕事
W = Fx cosθ
力と移動が垂直なら仕事は0(円運動の向心力、垂直抗力)。仕事率 P = W/t = Fv。
運動エネルギー
K = 12mv2
向きを持たない(スカラー)。v が2倍なら4倍。
位置エネルギー
U = mgh / U = 12kx2
基準面を自分で決める(どこでもよいが途中で変えない)。ばねは自然長からの伸び。
エネルギー原理(こちらが本体)
12mv2 − 12mv02 = Wすべての力
重力の仕事を左辺に移して mgh と書き換えたものが「力学的エネルギー保存」。 摩擦や空気抵抗があるときは、減った力学的エネルギー = 摩擦力 × すべった距離(=発生した熱)。
ANIMエネルギーは消えない ── 摩擦は「熱」という箱に移すだけ
あらい床(動摩擦係数 μ′) なめらかな斜面 高さ h エネルギーの内訳(合計はいつも mgh のまま) ■ 位置エネルギー mgy ■ 運動エネルギー ½mv² ■ 摩擦で発生した熱 μ′mg·d —
速さ v— 位置E— 運動E— 熱— m = 1.0 kg

床で止まるまでの距離は mgh = μ′mg·d より d = h/μ′。 質量が消えるのがおもしろいところ ── 重い物体ほど遠くまで行く、わけではない。

状況使う式ひとこと
なめらかな面・糸・ばねだけ力学的エネルギー保存½mv²+mgh+½kx² が一定
摩擦・空気抵抗がある(前)=(後)+ 摩擦熱熱 = f·d(d はすべった道のり)
人や機械が力を加えるエネルギー原理加えた仕事を右辺に足す
時間や力積が関わるこの章ではない→ 第5講の運動量へ
落とし穴
CHECK
CHAPTER 05

運動量と力積

衝突の問題でエネルギー保存を使ってはいけない ── 熱や音になって減るから。 衝突で必ず成り立つのは運動量保存だけ。エネルギーの減り方を指定するのが反発係数 e。

記号の約束
p運動量 [kg·m/s]F力 [N]t力がはたらいた時間 [s]m質量 [kg]v衝突前の速度 [m/s]v′衝突後の速度 [m/s]e反発係数h高さ [m]V合体後の速さ [m/s]
速度は向きを持つ量。右向きを正と決めたら、左向きの速度には必ず負号をつける。

5-1 力積は「運動量の変化」そのもの

力積と運動量
Ft = mv′ − mv
運動方程式 ma = F の両辺に t を掛けただけ。 力が変化するときは、F-tグラフの面積が力積になる(=平均の力 × 時間)。向きを持つ量なので、符号を必ず決める。
運動量保存
m1v1 + m2v2 = m1v1′ + m2v2′
外力がない(or 無視できる一瞬)なら必ず成立。衝突・分裂・打ち上げ。
反発係数
e = −v1′ − v2′v1 − v2
「近づく速さに対する遠ざかる速さの比」。0 ≦ e ≦ 1。
床との跳ね返り
h′ = e2h
速さが e 倍 → 高さは e² 倍。n回では e2nh。
ANIM衝突:運動量は必ず保たれ、運動エネルギーは e が1でないと減る
m₁ m₂ — — 運動量 p = mv(右向きを正) 衝突前 衝突後 運動エネルギー K — —
衝突後 v₁′— 衝突後 v₂′— 失った K—

e = 1(弾性衝突)だけが運動エネルギーも保たれる。e = 0 なら合体して一緒に進む。 どんな e でも、黒い運動量バーの長さは衝突の前後で変わらない。

5-2 エネルギーと運動量、どちらを使うか

問題文にあるもの使う道具典型
時間(0.1秒間、接触時間、平均の力)力積 Ft = Δ(mv)バットとボール、壁との衝突
衝突・合体・分裂運動量保存(+e)台車の衝突、ロケット、爆発
距離・高さ・ばねの縮みエネルギー斜面、振り子、ばね
衝突したあと、どこまで上がるか両方(衝突=運動量、その後=エネルギー)弾丸が木片に刺さって振れ上がる
頻出:弾丸が木片に刺さる型

①刺さる瞬間は一瞬なので運動量保存 → 一体となった速さ V = mv/(M+m)。
②刺さったあとはゆっくり振れ上がるのでエネルギー保存 → ½(M+m)V² = (M+m)gh。
この2段を1本の式でやろうとすると必ず間違う。区切りは「一瞬か、そうでないか」。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 06

円運動

「向心力という新しい力がある」と思った瞬間に沈む。 向心力とは張力や垂直抗力や重力が、たまたま中心を向いている合力のこと。新しい力は1つも増えない。

記号の約束
r円の半径 [m]ω角速度 [rad/s]v速さ [m/s]a向心加速度 [m/s²]T周期 [s]n1秒あたりの回転数 [1/s]F向心力 [N]m質量 [kg]
張力も T と書く習慣があるため、張力と周期が同じ問題に出るときは「張力 T・周期 T周期」のように書き分ける(この本ではそうしている)。

6-1 等速円運動の量は、すべて ω でつながる

速さ
v = rω
向きは常に接線方向。速さは一定でも速度は変化している。
向心加速度
a = v2r = rω2
向きは常に中心向き。速度が変わる=加速度がある。
周期・回転数
T = 2πω n = 1/T
1周にかかる時間。ω = 2πn。
運動方程式(向心方向)
mv2r = F
右辺には実在する力の中心向き成分の和を書く。
ANIM見る人によって、描く力の図が変わる
中心 r — — — — —
v = rω— a = rω²— F = mrω²— T = 2π/ω— m = 0.5 kg

地面から見れば「張力だけがあり、それが加速度をつくる」。 一緒に回る人から見れば「張力と遠心力がつり合って静止している」。 どちらか一方に決めて、混ぜないこと。遠心力を描いたうえで「向心力=mv²/r」と書くのが最悪のパターン。

FIG鉛直面内の円運動:最高点で糸がたるまない条件
T mg 最高点 最下点 最高点では、重力も張力もどちらも中心向き mg + T = mv²/r 糸がたるまない条件は T ≧ 0 だから v² ≧ gr 最下点では張力が上向き・重力が下向きなので T − mg = mv²/r 速さはエネルギー保存で別に求める(円運動の式だけでは出ない)

「向心方向の運動方程式」と「エネルギー保存」の2本立てが鉛直円運動の型。 位置によって力の向きの関係が変わるので、必ずその点で図を描き直す。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 07

単振動

単振動とは「ばねの運動」のことではない。加速度が変位に比例して、逆向きの運動すべてが単振動だ。 a = −ω²x の形を見つけた瞬間に、周期の公式が全部使える。

記号の約束
x振動の中心からの変位 [m]A振幅 [m]ω角振動数 [rad/s]T周期 [s]kばね定数 [N/m]K復元力の比例定数(F = −Kx の K)ℓ振り子の糸の長さ [m]m質量 [kg]g重力加速度
k と K は別物。ばねなら K = k だが、浮力や複数のばねが絡むと K は k と違う値になる。

7-1 定義は1本、あとは全部そこから出る

単振動の定義
a = −ω2x
力でいえば F = −mω²x = −Kx。 運動方程式を立てて、この形になったら単振動と判定し、ω = √(K/m)、T = 2π/ω = 2π√(m/K) と読む。 x は振動の中心からの変位であって、原点からの距離ではない。
変位・速度・加速度
x = A sin ωt
または x = A cos ωt
sin か cos かは、t = 0 でどこにいたかで決まる(中心なら sin、端なら cos)。 v は選んだ x を微分しただけ。a は x と逆位相、v は x より 1/4周期先。
最大値
vmax = Aω amax = Aω2
v が最大なのは中心、a が最大なのは端。ここが逆になりやすい。
ばね振り子
T = 2π√(m/k)
振幅にも重力にも無関係。鉛直につるしても周期は同じ。
単振り子
T = 2π√(ℓ/g)
質量に無関係(振れが小さいとき)。糸の長さと g だけで決まる。
ANIM単振動は「等速円運動を真横から見た影」
等速円運動する点 振動の中心 x-t グラフ(右端がいまの瞬間) t ■ x(変位) ■ v(速度)… 1/4周期ずれる — —
周期 T— ω— vmax— amax—

振幅 A を変えても周期は変わらない(グラフの山の高さだけが変わる)。 変わるのは m と k だけ ── これが T = 2π√(m/k) の意味。 赤い矢印(加速度)は常に中心を向き、端で最大・中心でゼロになる。

7-2 3本の式は「t が入っているか」で選ぶ

単振動で使える式は3本しかない。どれを選ぶかは、物理の内容ではなく 問題文に出てくる文字を見て機械的に決める。

式出てくる文字使う場面
中心から出発したとき
x = A sin ωt v = Aω cos ωt
x か v, t時刻が絡むとき
端から出発したとき
x = A cos ωt v = −Aω sin ωt
x か v, t時刻が絡むとき
v2 = ω2(A2 − x2)x, v(t なし)位置と速さを結ぶとき(出発点によらない)
sin と cos は「位置用・速度用」ではない

どちらを置くかは量の種類ではなく、t = 0 で物体がどこにいたかで決まる。 sin 0 = 0、cos 0 = 1 なので、スタート地点の値に合う方を置いているだけ。 v はそうして選んだ x を微分したものなので、 「x が sin なら v が cos」は中心スタートのときにしか成り立たない。

「ばねを A だけ引いて静かに放す」は端スタート=cos。 「静かに放す」=その瞬間 v = 0 =端、と読む。第8講セットアップ 2-5 はこの型。

FIG「周期の何分のいくつを求めたのか」は、角度で見ると目に見える
60° 30° T/6 T/12 P 中心 端 x = A x = A/2 参照円:等速で回る点 P の影が、そのまま単振動 角度 ÷ 360° = 周期の何分のいくつか 端 → x = A/2 60° = 1/6 周 → T/6 x = A/2 → 中心 30° = 1/12 周 → T/12 端 → 中心 90° = 1/4 周 → T/4 端から測る(cos) 60° をそのまま読んで T/6 中心から測る(sin) 90° − 30° を計算して T/6 = 引き算しているのは、この赤い 30° 分 端 → 中心 = T/4 端 x=A/2 中心 端 中心 端 0 T/6 T/4 T/2 3T/4 T 求めたいのは、この青 = T/6 sin で置くと出てくるのは、この赤 = T/12 青 + 赤 = T/4

7-1 のアニメ(等速円運動の影)と同じ円を、時間のものさしとして使う。 1周期 = 円を1周 = 360°。だから角度がそのまま「周期の何分のいくつか」を表す。 端から測れば 60° を読むだけで T/6。 中心から測る(sin で置く)と出てくるのは中心までの残り 30° → T/12 なので、 端 → 中心の T/4 から引くことになる ── T/4 − T/12 = T/6。 式の上では急に引き算が現れて見えるが、やっているのは角度の引き算にすぎない。 足して T/4 に戻るかどうかが、そのまま検算になる。

解き始める前に3行書く

与えられた文字:問題文にある量をすべて書き出す
求める文字:聞かれている量
出てこない文字:どこにも登場しない量 ← これが決め手

例)「振幅 A、角振動数 ω の単振動で、変位が A/2 のときの速さは?」
→ 与えられた:A, ω, x / 求める:v / 出てこない:t
x と v を直接結ぶ式(3本目)があるので、t を経由する必要がない。

ただし「出てこない文字は使ってはいけない」ではない

正しくは 「経由しなくても結べるなら、経由しない」。 経由しないと結べないときは、出てこない文字でも堂々と置く。

判定はこの3ステップ

① 与えられた量と求める量を書く
② その2つを直接結ぶ式があるか探す
③ あれば使う(経由なし)/なければ橋渡しの文字を1つ置く

遠回りが損な理由は「長いから」ではない。 経由する文字を求める段階で余計な条件が入り込むから。 7-5で t を経由すると(中心スタートで置いた場合)sin ωt = 1/2 の解が π/6 と 5π/6 の2つ出て、 cos が ±√3/2 になり符号の場合分けが要る。 直接結べばその手間ごと消える。

なぜ3本目が「エネルギー保存」なのか
v2 = ω2(A2 − x2) の両辺に m2 をかけると 12mv2 + 12Kx2 = 12KA2
まったく同じ式を2通りに書いているだけ。
第1講の v² − v₀² = 2ax も、両辺に m/2 をかければ ½mv² − ½mv₀² = max = W になり、エネルギー原理そのものになる。
つまりエネルギーの式とは「時間を消した運動方程式」。だから 「時間が出てこない問題では、エネルギーを使う」が全単元で通用する。
問題文に出てくるもの使う道具
時間(何秒後・接触時間・平均の力)運動方程式・力積
距離・高さ・変位(時間は聞かれない)エネルギー
衝突・合体・分裂運動量保存

7-3 「振動の中心」はつり合いの位置

鉛直につるしたばね振り子では、自然長の位置ではなく 力がつり合う位置(自然長から mg/k 伸びた点)が振動の中心になる。 そこを原点に取り直せば、重力の項がきれいに消えて ma = −kx の形になる。だから周期は水平のときと同じ。

単振動の解き方(型)

① つり合いの位置を求める(そこが振動の中心)
② 中心から x だけずらして運動方程式を立てる
③ ma = −Kx の形にして K を読む → T = 2π√(m/K)
④ 速さが要るならエネルギー保存 ½mv² + ½Kx² = ½KA²

落とし穴
CHECK
CHAPTER 08

万有引力

扱う式は多くないが、位置エネルギーが負という一点だけが気持ち悪い。 「無限に離れたところをゼロとする」と決めたから、近づくほど値が下がって負になる ── それだけのこと。

記号の約束
G万有引力定数M中心にある天体の質量 [kg]mまわる物体の質量 [kg]r中心からの距離 [m]R天体の半径 [m]U万有引力の位置エネルギー [J]T公転周期 [s]a楕円軌道の長半径 [m]v速さ [m/s]g地表の重力加速度
a はここでは加速度ではなく長半径。第1講の a(加速度)とは別物なので、問題文の定義を必ず読む。

8-1 4つの式で全部足りる

万有引力
F = GMmr2
距離の2乗に反比例。r は中心間距離(地表なら地球半径 R)。
位置エネルギー
U = −GMmr
無限遠が基準(U=0)。負の値。r に反比例(2乗ではない)。
円軌道の条件
GMmr2 = mv2r
万有引力が向心力そのもの。ここから v = √(GM/r)。
ケプラー第3法則
T2a3 = 一定
同じ中心天体を回るものどうしで比較する。a は長半径(円なら半径)。
地表での関係(暗記より導出)
mg = GMmR2 → GM = gR2
この置き換えで G と M が消える。
第一宇宙速度(地表すれすれの円軌道):v = √(GM/R) = √(gR) ≒ 7.9 km/s
脱出速度(無限遠で速度0になる):½mv² − GMm/R = 0 より v = √(2gR) ≒ 11.2 km/s(=√2 倍)
ANIM面積速度一定(ケプラー第2法則):同じ時間なら、同じ面積を掃く
中心天体(焦点) 近日点(速い) 遠日点(遅い)
距離 r— 速さ v— 面積速度— 青と橙の面積は等しい(掃いた時間が同じ)

中心天体に近いほど速く動く。だから同じ時間で掃く扇形の面積が等しくなる。 e = 0 にすると円軌道になり、速さが一定になる。
面積速度一定は角運動量保存の言いかえで、r1v1 = r2v2(近日点・遠日点では速度と半径が垂直なのでこう書ける)。

落とし穴
CHECK