理論化学は配点で全体の約半分を占めるだけでなく、無機の工業的製法も有機の構造決定も、
結局は物質量の計算に落ちる。ここが速く正確なら、化学全体が安定する。
新課程の最大の変更点は熱化学。熱化学方程式が廃止され、エンタルピー ΔH 表記になった。
発熱が「+」から「−」に変わる ── ここだけは旧課程の記憶を上書きすること。
アボガドロ定数 NA = 6.0×1023 /mol / 気体定数 R = 8.3×103 Pa·L/(K·mol)
標準状態(0 ℃, 1.013×105 Pa)の気体1 mol = 22.4 L / ファラデー定数 F = 9.65×104 C/mol
原子量:H 1.0 C 12 N 14 O 16 Na 23 Mg 24 Al 27 S 32 Cl 35.5 K 39 Ca 40 Fe 56 Cu 64 Zn 65 Ag 108 Pb 207
化学の計算はすべて mol を経由する。質量・体積・粒子数のどれから聞かれても、いったん mol に落として、また戻す。 この往復が反射になるまでが第一関門。
気体の体積 22.4 L/mol が使えるのは気体だけ(標準状態)。 NaCl や H₂SO₄ の「体積」を 22.4 で計算しないこと ── 計算欄が意味を持つのは気体のときだけ。
質量パーセント濃度 w [%]、密度 d [g/cm³] の溶液のモル濃度 c [mol/L] を出すとき、 公式を覚えるより 溶液1 Lを取り出して考えるほうが速くて間違えない。
| 濃度 | 定義 | 使う場面 |
|---|---|---|
| モル濃度 [mol/L] | 溶質mol ÷ 溶液の体積L | 中和滴定、酸化還元滴定、pH |
| 質量パーセント [%] | 溶質g ÷ 溶液のg ×100 | 市販の濃塩酸・濃硫酸 |
| 質量モル濃度 [mol/kg] | 溶質mol ÷ 溶媒のkg | 沸点上昇・凝固点降下(ここだけ) |
共通テストの結晶格子はほぼ計算問題。「単位格子に何個入っているか」と「一辺 a と半径 r の関係」の 2つさえ出せれば、密度も充填率もアボガドロ定数も同じ式から出てくる。
頂点の原子は8個の格子で分け合うので 1/8 個ぶん、面の中心は2つで分け合うので 1/2 個ぶん、 中心にあるものはまるごと1個。だから 単純=1、体心=2、面心=4 になる。
| 結晶 | 構成粒子と結合 | 融点 | 電気伝導 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| イオン結晶 | 陽イオン・陰イオン/静電気力 | 高い | 固体×、液体・水溶液○ | NaCl, CaO |
| 分子結晶 | 分子/分子間力 | 低い・昇華性 | × | ドライアイス、ヨウ素 |
| 共有結合の結晶 | 原子/共有結合 | 非常に高い | ×(黒鉛だけ○) | ダイヤモンド、SiO₂ |
| 金属結晶 | 金属原子/自由電子 | さまざま | ○ | Fe, Cu, Al |
PV = nRT は1本だけ。差がつくのは蒸気圧の扱い。 「全部気体だと仮定して計算し、出た圧力を飽和蒸気圧と比べる」── この手順を毎回踏むかどうかで決まる。
灰色の点線が「すべて気体だと仮定したときの P = nRT/V」。 実際の圧力(緑)はそれを追いかけるが、飽和蒸気圧に達すると凝縮が始まり、そこから先は一定。 「計算値 > 飽和蒸気圧」なら液体が存在すると判断する。
① すべて気体と仮定して P = nRT/V を計算
② その温度の飽和蒸気圧と比べる
③ 計算値 ≦ 飽和蒸気圧 → 全部気体。計算値がそのまま答え
④ 計算値 > 飽和蒸気圧 → 一部が液体。圧力は飽和蒸気圧に等しいとし、気体の mol を n = P飽和V/RT で出し直す
理想気体は「分子自身の体積0・分子間力なし」と決めた仮想の気体。実在の気体は 低温・高圧でずれが大きい。Z = PV/nRT が1からどうずれるかで整理する。
溶解度はグラフを読んで引き算するだけ。束一性は粒子の数がすべて。 電解質なら電離してできた粒子の数だけ、効果が倍になる。
硝酸カリウム KNO₃ の溶解度曲線。析出量 = 入れた量 − その温度の溶解度。 ここで水の量が100 gでないときは、比例で直してから引く。
CuSO₄·5H₂O のように結晶が水を連れて出ていく場合、析出した結晶の質量を x [g] と置き、 溶質の収支と溶媒(水)の収支の2本を立てる。無水物の質量比(CuSO₄ 160 / CuSO₄·5H₂O 250)で分ける。
2025年実施ぶんから、熱化学方程式は廃止された。かわりに化学反応式の右に ΔH を書く。発熱反応の符号が + から − に変わる ── 変更点は実質ここだけだが、 ここを間違えると全問落とす。
ヘスの法則:どんな道を通っても、始点と終点が同じなら ΔH の合計は同じ。 だから ΔH = ΔH1 + ΔH2。 矢印が下向き(エネルギーが減る)なら発熱で負、上向きなら吸熱で正。
| 名前 | 基準 | 符号 | 例 |
|---|---|---|---|
| 生成エンタルピー | 化合物 1 mol が単体からできるとき | ふつう負 | CO₂ で −394 kJ/mol |
| 燃焼エンタルピー | 物質 1 mol が完全燃焼するとき | 必ず負 | CH₄ で −891 kJ/mol |
| 中和エンタルピー | 水 1 mol ができるとき | 負(約 −56 kJ) | 強酸+強塩基ならほぼ一定 |
| 溶解エンタルピー | 物質 1 mol が多量の水に溶けるとき | 正も負もある | NaOH は負(発熱) |
発生した熱 Q [J] = 質量 m [g] × 比熱 c [J/(g·K)] × 温度変化 ΔT [K]
水の比熱は 4.2 J/(g·K)。「溶液の温度が何℃上がったか」から出した Q を、反応した mol で割ると1 molあたりの ΔH になる(発熱なら負号をつける)。
共通テストの反応速度はグラフと表の読み取りが主戦場。 速度式の次数は「実験でこう決まった」という与えられた事実であって、係数から勝手に決めてはいけない。
ほかの濃度を固定して、1つだけ2倍にする実験を探す。そのとき速さが 2倍なら1次、4倍なら2次、変わらなければ0次。これを各成分について順にやるだけ。
左:触媒は山を低くする(別の道すじを用意する)。始点と終点は動かないので ΔH は変わらない。
右:温度を上げると分布が右に広がり、Ea を越えられる分子(赤い部分)が急に増える。
温度を10 ℃上げただけで速さが約2倍になるのはこのため。(横軸は模式的な目盛り。実際の Ea は平均のエネルギーの何十倍も右にあるので、赤い部分の割合はこの図よりずっと小さい)
平衡定数 K は温度だけで決まる。濃度を変えても圧力を変えても K の値は変わらず、 各濃度のほうが動いてつじつまを合わせる ── これがルシャトリエの正体。
| 操作 | 平衡はどちらへ動くか | K の値 |
|---|---|---|
| ある物質の濃度を増やす | その物質が減る向き | 変わらない |
| 圧力を上げる(体積を小さくする) | 気体の分子数が減る向き | 変わらない |
| 温度を上げる | 吸熱(ΔH > 0)の向き | 変わる |
| 触媒を加える | 動かない(速く平衡に達するだけ) | 変わらない |
| 体積一定で反応に関係しない気体を加える | 動かない(分圧が変わらない) | 変わらない |
0.10 mol/L の酸 10 mL に、0.10 mol/L の NaOH を滴下したときの計算値。
強酸+強塩基 → 中和点 pH 7(どちらの指示薬でもよい)。
弱酸+強塩基 → 中和点は塩基性(酢酸ナトリウムの加水分解)なのでフェノールフタレインを使う。
弱酸のほうは中間あたりの傾きがゆるい ── ここが緩衝作用のはたらいている領域。
電池と電気分解は同じ図の矢印が逆になっただけ。 どちらも「電子がどこから出てどこへ入るか」を1本の線で追えば、極の名前も反応式も自動的に決まる。
電子が出ていく極が「酸化」される。電池ならそれが負極、電気分解ならそれが陽極。
名前は逆でも、酸化が起きているという中身は同じ。
電流の向きは電子と逆(電池の正極から出て負極へ戻る、というのが電流の定義)。
| 電池(自発的に進む) | 電気分解(電気で無理に進める) | |
|---|---|---|
| 電子が出る極 | 負極(酸化) | 陽極(酸化) |
| 電子が入る極 | 正極(還元) | 陰極(還元) |
| 例 | Zn → Zn²⁺ + 2e⁻ | 2H₂O → O₂ + 4H⁺ + 4e⁻ |