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物理/第2部 電磁気
共通テスト 2027PHYSICS 02

電磁気は目に見えない
だから図に描く

力学に次ぐ重量級で、配点も力学に匹敵する。 つまずく原因はほぼ1つ、見えないものを頭の中だけで処理しようとすること。 電場の向き、電流の向き、誘導起電力の向き ── すべて紙に矢印を描いてから式に入る。それだけで正答率が変わる。

電磁気を落とさないための3原則

1 向きを図に描いてから式を書く。電場・電流・磁場・力は全部ベクトル。頭の中で回さない。

2 「何が一定か」を最初に決める。コンデンサーはスイッチが閉じていれば電圧一定、開いていれば電荷一定。ここで全部決まる。

3 力学の言葉に翻訳する。電場=重力加速度、電位=高さ、電位差×電荷=仕事。力学で解けた形に持ち込む。

CHAPTER 01

静電気力と電場

電場とは「そこに +1 C を置いたら、どちら向きにどれだけの力を受けるか」を表した地形図のようなもの。 電荷がなくても空間に存在している、と考えるのがコツ。

記号の約束
q, Q電荷 [C](符号を含む) r電荷間の距離 [m] kクーロンの法則の比例定数 9.0×10⁹ N·m²/C² F静電気力 [N] E電場(電界)[N/C = V/m]
電場 E は「+1 C が受ける力」なので、負の電荷は電場と逆向きに力を受ける。ここを取り違えると全問ずれる。

1-1 クーロンの法則は万有引力とそっくり

クーロンの法則
F = kq1q2r2
距離の2乗に反比例。万有引力と同じ形だが、引力にも斥力にもなるのが違い。
電場の定義
E = Fq → F = qE
「+1 C あたりの力」。力学の F = mg と同じ構造(qmEg)。
点電荷のつくる電場
E = kQr2
正電荷なら外向き、負電荷なら内向き。複数あればベクトルで足す。
電気力線
正から出て負に入る
向き=電場の向き、密度=電場の強さ途中で交わらない・枝分かれしない
ANIM2つの電荷がつくる電場 ── 矢印は「+1 C が受ける力の向き」
+

同符号にすると矢印が反発するように広がり、異符号にすると片方からもう片方へ流れ込む。 矢印が密なところが電場の強いところ。中点の矢印に注目すると、 「同符号なら打ち消し合ってゼロ」「異符号なら足し合わさって最大」がはっきり見える。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 02

電位

電位は電気の世界の「高さ」。正電荷は高いほうから低いほうへ落ちる。 電場がベクトルで面倒なのに対し、電位はスカラーなので符号つきで足すだけ ── 使えるところでは必ず電位を使う。

記号の約束
V電位 [V](無限遠を0とする) U静電気力の位置エネルギー [J] W仕事 [J] q, Q電荷 [C] d一様電場中の距離 [m] E電場 [V/m]
電位 V はスカラー(向きなし・符号つきで足す)、電場 E はベクトル(向きあり)。この違いが全部の分かれ目。

2-1 電位は「+1 C あたりの位置エネルギー」

点電荷のつくる電位
V = kQr
距離の1乗に反比例(電場は2乗)。負電荷なら電位も負。複数あれば符号つきで足すだけ
位置エネルギー
U = qV
力学の U = mgh と同じ(qmVgh)。
仕事と電位差
W = qVAB = q(VA − VB)
経路によらない(保存力)。エネルギー保存 ½mv² + qV = 一定 が使える。
一様な電場
V = Ed → E = Vd
平行板の間。だから電場の単位は V/m とも書ける。
ANIM電位は「地形の高さ」── 電場はその坂の傾き
x 電位 V +

青い曲線が電位 V。赤い直線はその点の接線で、傾きの符号を変えたものが電場E = −ΔV/Δx)。 坂が急なところほど電場が強い。両方を正にすると、真ん中に谷ではなく山ができる ── 正電荷は真ん中に置けない、が図で見える。

電場と電位、どちらで解くか

力を聞かれたら電場(ベクトル合成)、速さ・エネルギー・仕事を聞かれたら電位(スカラー計算)。 「電場が0の点」と「電位が0の点」は別の場所である、というのが定番の引っかけ。 +Qと−Qなら、中点は電場が最大で電位は0になる。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 03

コンデンサー

コンデンサー問題の勝負は「スイッチが閉じているか、開いているか」の一点。 閉じていれば電圧が一定、開いていれば電荷が一定。どちらが固定されるかを最初に書き込めば、あとは Q = CV だけ。

記号の約束
C電気容量 [F](1 F = 10⁶ μF = 10¹² pF) Qたくわえた電荷 [C] V極板間の電圧 [V] S極板の面積 [m²] d極板の間隔 [m] ε誘電率(真空は ε₀) U静電エネルギー [J]

3-1 4つの式で全部足りる

定義
Q = CV
この1本がすべての出発点。C は形で決まる定数で、電圧をかけなくても存在する。
平行板の容量
C = εSd
広いほど大きく、離すほど小さい。誘電体を入れると ε が増えて C が増える。
静電エネルギー
U = 12QV = 12CV2 = Q22C
3つとも同じもの。何が一定かに応じて使う式を選ぶ(V一定なら真ん中、Q一定なら右)。
合成容量
並列 C = C1 + C2
直列 1C = 1C1 + 1C2
抵抗と逆。並列は面積が増えるイメージ、直列は間隔が増えるイメージ。
ANIMスイッチを開いてから極板を動かすと、何が変わるか
100 V スイッチ d いまの状態
C Q V E U

スイッチを閉じたまま d を広げる → V は 100 V のまま、C が減るので Q が減る(電池に電荷が戻る)。
スイッチを開いてから d を広げる → Q は動けないので一定、C が減るぶん V が上がる。 このとき E = Q/(εS)変わらない ── 極板を引き離すのに仕事が要るので U は増える。

操作スイッチ閉(V一定)スイッチ開(Q一定)
d を広げるC↓ Q↓ E↓ U↓C↓ V↑ E そのまま U↑
誘電体を入れるC↑ Q↑ E そのまま U↑C↑ V↓ E↓ U↓
面積 S を広げるC↑ Q↑ E そのまま U↑C↑ V↓ E↓ U↓
落とし穴
CHECK
CHAPTER 04

直流回路

回路は「同じ電流が流れるのはどこか」「同じ電圧がかかるのはどこか」を見分けるゲーム。 直列は電流が同じ、並列は電圧が同じ。この2行で合成抵抗も分圧も全部出る。

記号の約束
I電流 [A] V電圧・電位差 [V] R抵抗 [Ω] ρ抵抗率 [Ω·m] L導線の長さ [m] S導線の断面積 [m²] P電力 [W] r電池の内部抵抗 [Ω]
L・S は導線の形の話で、コンデンサーの S(極板面積)とは別。同じ文字が別の意味で出てくるので、問題文の定義を読む。

4-1 直列と並列の見分けがすべて

オームの法則
V = RI
抵抗の両端の電圧。抵抗の中でだけ電位が下がる(導線では下がらない)。
合成抵抗
直列 R = R1 + R2
並列 1R = 1R1 + 1R2
コンデンサーと逆。並列にすると合成抵抗はどちらより小さくなる(検算に使える)。
抵抗率
R = ρLS
長いほど大きく、太いほど小さい。同じ材質でも形で抵抗は変わる
電力
P = VI = I2R = V2R
直列なら I²R(大きい抵抗ほど発熱)、並列なら V²/R(小さい抵抗ほど発熱)で考える。
ANIM直列と並列:電流の流れ方が目で見えると、式は要らない
各部の値
合成抵抗 全電流 全消費電力 電池 12 V(内部抵抗なし)

直列:粒(電流)は1本道なので、どこでも同じ数だけ流れる。電圧は抵抗の比で分かれる(大きい抵抗に大きい電圧)。
並列:分かれ道で粒が分かれる。電圧は同じで、電流は抵抗の逆比で分かれる(小さい抵抗にたくさん流れる)。

4-2 キルヒホッフの法則は「当たり前」を式にしただけ

立式の手順(迷ったらこれ)

各枝に電流の文字と向きを勝手に決めて矢印を書く(間違っていても、答えが負になるだけ)
分岐点で第1法則を書く(未知数を1つ減らせる)
閉じた経路を1周して第2法則を書く。電流の向きに進めば電位は下がる(−RI)、電池は −極→+極に進めば上がる(+E)
未知数の数だけ式を作って連立

落とし穴
CHECK
CHAPTER 05

電流と磁場

ここは手を使う単元。右ねじの法則とフレミング左手を、頭ではなく指で覚える。 試験中に机の下で手を動かしても減点はされない。

記号の約束
I電流 [A] H磁場(磁界)の強さ [A/m] B磁束密度 [T(テスラ)] μ透磁率(B = μH) r導線からの距離 [m] nソレノイドの1 mあたりの巻き数 [1/m] L磁場中にある導線の長さ [m] F電流が磁場から受ける力 [N]
n は「1 mあたりの巻き数」であって全巻数 N ではない。全長 ℓ・全巻数 N なら n = N/ℓ。

5-1 電流がつくる磁場

直線電流
H = I2πr
同心円状。向きは右ねじ(親指を電流の向きに、指の巻く向きが磁場)。
円形電流(中心)
H = I2r
π が付かないほう。中心軸に沿った向き。
ソレノイド(内部)
H = nI
半径によらない。内部はほぼ一様な磁場になる。
電流が受ける力
F = IBL sinθ
磁場に垂直なら F = IBL平行なら 0。向きはフレミング左手(中指=電流、人差し指=磁場、親指=力)。
ANIM直線電流のまわりの磁場と、磁場が電流におよぼす力
左:まっすぐな電流がつくる磁場(紙面に垂直な電流) × 右:一様な磁場の中の電流が受ける力 I F = IBL

左:電流を大きくすると磁力線の輪が密になる(H = I/2πr)。向きを反転すると輪の回る向きも反転する。
右:電流の向きと磁場の向きの両方に垂直に力がはたらく。どちらかを反転すれば力も反転し、両方反転すれば力は元のまま。

記号の意味(共テで図に出る)

×=紙面のへ向かう向き(矢の羽根を後ろから見た形)  =紙面の手前へ出てくる向き(矢の先端を正面から見た形)
平行電流の力:同じ向きの電流どうしは引き合い、逆向きは反発する(磁石と逆なので注意)。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 06

ローレンツ力

磁場の中を動く電荷は、進行方向と垂直に力を受ける。垂直ということは仕事をしない、 つまり速さは絶対に変わらない。だから軌道は円になる ── ここまでが1本の論理でつながる。

記号の約束
q電荷の大きさ [C] v速さ [m/s] B磁束密度 [T] fローレンツ力 [N] r円運動の半径 [m] T周期 [s] m粒子の質量 [kg] E電場 [V/m]

6-1 円運動の式に代入するだけ

ローレンツ力
f = qvB
速度と磁場の両方に垂直。速度と磁場が平行なら 0(そのまま直進する)。
円運動の半径
r = mvqB
mr = qvB を解いただけ。速いほど大きな円、磁場が強いほど小さな円。
周期
T = 2πmqB
速さによらないのが最大の特徴。速い粒子は大きな円を速く回るので、一周の時間は同じ。
速度選択器
qE = qvB → v = EB
電場と磁場を直交させ、力がつり合う速さの粒子だけがまっすぐ通り抜ける。
ANIM磁場の中に打ち込まれた荷電粒子は、円を描く
磁場の領域(紙面の奥向き ×) 読み取り v を変えても変わらない 紫=速度 赤=ローレンツ力 力はつねに速度と垂直=仕事をしない

v を大きくすると円が大きくなり、B を大きくすると円が小さくなるr = mv/qB)。 電荷の符号を変えると回る向きが反転する。どちらの場合も、赤い矢印(力)は常に円の中心を向いている。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 07

電磁誘導

レンツの法則は「変化を邪魔する向きに電流が流れる」の一言。 近づければ遠ざけようとし、遠ざければ引き止めようとする。天邪鬼だと思っておけば向きは間違えない

記号の約束
Φ磁束 [Wb](Φ = BS) B磁束密度 [T] Sコイルが囲む面積 [m²] Nコイルの巻き数 V誘導起電力 [V] v導体棒の速さ [m/s] L導体棒の長さ/自己インダクタンス [H] R回路の抵抗 [Ω]
L が2つの意味で出てくる(導体棒の長さと自己インダクタンス)。問題文がどちらを指しているか必ず確認する。

7-1 起電力の大きさと向き

ファラデーの電磁誘導の法則
V = −NΔΦΔt
マイナスは「変化を妨げる向き」を表す(レンツの法則)。大きさは NΔΦ/Δt、向きはレンツで別に判断するのが実戦的。
Φ = BS なので、起電力が生じるのはB が変わるか、S が変わるか、向きが変わるかの3通りしかない。
磁場中を動く導体棒
V = vBL
ΔΦ/Δt = B(LvΔt)/Δt から出る。棒の中の電子がローレンツ力を受けると考えても同じ。
流れる電流と力
I = vBLR F = IBL
力の向きは運動を妨げる向き(ブレーキ)。だから等速で動かすには外力が要る。
エネルギー
外力の仕事 = ジュール熱
等速なら Fv = I²R がぴったり一致する。電磁誘導は発電のしくみそのもの
自己誘導
V = −LΔIΔt U = 12LI2
コイルは電流の変化を嫌う。スイッチを入れた直後は電流0、十分時間がたつとただの導線。
ANIMレール上の導体棒 ── 動かすと発電し、そのぶん重くなる
R v F(運動を妨げる) 磁場は紙面の奥向き(×) L = 0.50 m、R = 2.0 Ω
起電力 vBL 電流 I 棒が受ける力 ジュール熱

棒を速く動かすほど起電力が大きくなり、電流も、邪魔をする力も大きくなるv を2倍にすると起電力は2倍、電流も2倍、力も2倍、発熱は4倍I²R)。 そのぶん外力がする仕事も4倍になり、つじつまが合う。

レンツの法則の使い方(3秒で向きを決める)

いまコイルを貫く磁束はどちら向きか
それが増えているのか減っているのか
増えているなら打ち消す向き、減っているなら補う向きの磁場をつくるように電流が流れる
③の磁場の向きから、右ねじで電流の向きを決める。

落とし穴
CHECK
CHAPTER 08

交流と電磁波

交流は「抵抗・コイル・コンデンサーで、電流と電圧のタイミングがどうずれるか」の話。 抵抗はぴったり同時、コイルは電流が遅れ、コンデンサーは電流が先に流れる。

記号の約束
V₀, I₀電圧・電流の最大値 Ve, Ie実効値 ω角周波数 [rad/s](ω = 2πf) f周波数 [Hz] L自己インダクタンス [H] C電気容量 [F] Xリアクタンス [Ω] N₁, N₂変圧器の1次・2次の巻き数

8-1 実効値とリアクタンス

実効値
Ve = V02
家庭用100 Vは実効値。最大値は約141 V。消費電力を直流と同じ式で書けるように決めた値
コイルのリアクタンス
XL = ωL
周波数が高いほど通しにくい。電流の位相は電圧より π/2 遅れる
コンデンサーのリアクタンス
XC = 1ωC
周波数が高いほど通しやすい(直流は通さない)。電流の位相は π/2 進む
共振
f = 1(LC)
XL = XC になる周波数。ラジオの選局はこれ。
ANIM電圧と電流のタイミングのずれ
時間 ■ 電圧 V ┅ 電流 I(破線)

抵抗:山と山がそろう(同位相)。コイル:電流の山があとから来る(π/2 遅れ)。 コンデンサー:電流の山が先に来る(π/2 進み)。 周波数を上げるとコイルは電流が小さくなり、コンデンサーは大きくなる ── これがリアクタンスの意味。

8-2 変圧器と電磁波

変圧器
V1V2 = N1N2 (電力は保存:V1I1 = V2I2
巻き数の比で電圧が変わる。電圧を上げれば電流は下がる。送電線で高電圧にするのは、 ジュール熱 I²R を減らすため(電流を1/10にすれば損失は1/100)。直流では変圧できないので送電は交流。
電磁波
c = fλ (真空中で c = 3.0×108 m/s)
電場と磁場が互いに直交し、進行方向にも直交して進む横波。
波長の長い順に 電波 → 赤外線 → 可視光 → 紫外線 → X線 → γ線。 可視光は約 400〜800 nm。赤が長く、紫が短い。
落とし穴
CHECK